高齢者と老後。現役ヘルパーが考えたこと。

高齢者の排泄

高齢者の排泄の部分はとてもデリケートな部分になります。
誰もが人に下の世話はされたくないと思っていますし、排泄の悩みを相談すること事態が勇気のいる行動なのです。

 

私が担当した84歳女性のAさんもそのような悩みを持たれている一人でした。
Aさんは人里離れた山奥に一人暮らし。近くにお店もないので週1回ヘルパーさんに来てもらい買い物と掃除をお願いしていました。

 

ある寒い日にAさん宅に訪問しました。天気予報で雪が降ると言っていたので心配で様子を見に行ったのです。
Aさんのお宅は昔ながらの作りでトイレは外にありました。
会話の流れで
「夜は眠れていますか?」
と尋ねると
「寒いとトイレが近くてね。」
と答えて下さいました。
「トイレは外ですけど大丈夫ですか?寒いと体もすぐには動かないでしょうし、大変じゃありませんか?」
と質問したところ
「それがね。間に合わないときもあってね。夜中に温かいタオルで拭いて着替えて大変なときも多くなってね。」
と話してくださいました。

 

誰にも相談できず、ご自分でテレビの通信販売で軽い尿漏れに対応するパンツも購入されたようですが、それで事足りていないようでした。

 

私は、すぐに担当ケアマネージャーに相談し、市からリハビリパンツと尿とりパッドの支給をお願いしてもらいました。
届くまでに時間がかかったので、翌日オムツ等を取り扱っている業者の方から頂いたサンプル品を持って再度訪問しました。
使い方を教えると、
「こんな良いものがあったの?
こんな山奥に一人でいると何も情報がなくてね。本当に有難い。」
と何度も頭を下げお礼を言ってくださいました。
私は、介護の仕事をしながら、排泄に関しての知識や商品を高齢者の方はご存知だとばかり思い込んでいました。
Aさんの件があって、そうでは無いことに気づかされ、もっと早くに気づいてあげられなかったことを悔やみました。

 

後日使い心地はどうだったか尋ねるために再びAさん宅へ訪問しました。
「私は、本当に世の中のことを知らなくてね。馬鹿みたいなの。
すごく使いやすくてね、温かくてよかったよ。でもやっぱり失敗して汚しちゃったから洗おうと思って、水につけたら、ドロドロになってしまったの。
娘に電話したら、そんなの当たり前でしょ!使い捨てに決まってるでしょ!と怒られてしまったわ。」
申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
あの時、情報が無くて何もわからないっておっしゃっていたのに。
何もかも高齢者の方が知っているわけではないと気づいたと思っていたのに。
Aさんに深くお詫びをしました。使い方のみで処理の仕方まで教えなかった私の責任でした。
その後、Aさんは使い方にもなれ安心して過ごせるようになったと聞かせて下さいました。

 

Bさんは76歳の男性の方でした。脳梗塞にて右半身麻痺になり奥様が介護されていました。排泄はベッド横においてあるポータブルトイレで行うことができました。

 

いつものようにポータブルトイレに誘導しました。いつも排尿のみでしたが、その日は私が担当して初めてお通じがありました。

 

奥様は慌てて、新聞紙やお尻拭き用のウェットティッシュを持って来られたのですが、私は陰洗ボトルと呼んでいる台所洗剤の空容器にお湯を入れ、お尻から便がなくなるまで綺麗に洗浄し、その後温かいタオルで拭き、乾いたタオルでもう一度拭いて対応しました。
この方法は、どこのご家庭でも行う排泄介助の一連の流れでした。

 

ご主人をベッドへ再び誘導し、物品の後片付けをしていたら、奥様が現れ
「え?もう終わったんですか?もう私は便が出たら慌てちゃって・・・」
「奥さんすみません。せっかくお尻拭きなど準備して頂いたのに、ついいつものやり方でしてしまいました。すみませんでした。奥様の介護の方法があったでしょうに申し訳ありません」
と謝罪したところ
「何を言っているの?どうしてこんなに早く処理できるのか私のほうが教えてもらいたいわ」
とおっしゃってくださいました。一連の流れを説明すると
「なるほどね。お湯で洗い流すのね。実はね、お尻拭きで綺麗になるまで何度も拭くんだけど、なかなか取れるもんじゃないでしょ?早くしようと思って拭いていたら、お父さんが痛いって言うの。もう少しだから我慢してねって言ってやってたんだけど、アルコール成分が入っているのかな?お父さん皮膚が弱いからかぶれてしまうこともあって・・・。良い方法を聞いたわ。今度試してみるわね」
奥様も自己流で介護をされていたようでした。たまたま、今回排便があったので伝えることができたわけですが、普段の介護方法も尋ねるべきであることを痛感しました。
翌週、訪問すると奥様開口一番
「この間教えてくれた方法試してみたわよ!早く洗い流せるし、なによりお尻拭きのときはゴミの量も多かったけど、ゴミは出ないし!お父さんのお尻には優しいし、本当に良いこと教えてもらったわ。ありがとう」
と感謝の言葉を頂きました。

 

確かに私も子育てする中で長女が赤ちゃんの頃、頻繁に便をしてお尻拭きで拭いているとかぶれてしまうことがありました。
長男を育てる際は介護の仕事を始めていたのでお尻をボトルで洗い流しかぶれることは一度もありませんでした。

 

知識があるか無いかでは大きく違います。私たち介護従事者が情報源になりより良い介護の方法、排泄の手助けができるよう努めていきたいものです。

 


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